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『兎、波を走る』多部未華子インタビュー

多部未華子「試して失敗しての繰り返しの中に気づきがあったりもする」 野田秀樹作品に初参加

多部未華子「試して失敗しての繰り返しの中に気づきがあったりもする」 野田秀樹作品に初参加

今年春、長期休館目前の渋谷・シアターコクーンで開催されたショースタイルの公演『シブヤデマタアイマショウ』。総合演出の松尾スズキさんをはじめとした個性的なキャスト陣の中で、誰よりもインパクトを残したのが多部未華子さんだった。演技も華もだが、それ以上に多部さんの表情や動きの愛くるしさに目を奪われ、自然と多部さんの役柄に共感し応援したくなってしまうのだ。

「役者さんなら誰もが思うことだと思いますが、私はなるべく演出家の方がやりたいというもの、思い描くイメージに近づけたいと思っているひとりというだけです。ただ最近は、1か月近い舞台の稽古期間を楽しいと思うようになりました。若い頃は、やるべきことをやり、自分の出番が終わったら帰りたいと思っていたけれど、今は他の方が試行錯誤している様子を見て学ぶこともあるし、みんなでいろんなことを試して失敗しての繰り返しの中に気づきがあったりもする。勉強になるし、楽しいと思うようになりました」

そんな多部さんの次の舞台は、NODA・MAP『兎、波を走る』。今の日本の演劇界のトップランナーである野田秀樹さんの作品に初参加となる。

劇作家・演出家の野田秀樹が率いるNODA・MAPの2年ぶり書き下ろし新作『兎、波を走る』が、東京・池袋の東京芸術劇場プレイハウスで上演中。今日性を持つテーマ、圧倒的な語彙を持って語られるせりふが目まぐるしく複雑に絡み合い、物語が進むにつれて表層とは違う世界が姿を現す、野田秀樹らしい作品だ。


『兎、波を走る』多部未華子インタビュー

「演出家は野田さんですが、チーム全体でアイデアを出し合っている感じです。野田さんもですし周りの方も、意見を言いやすいし聞きやすい環境にしてくれているんです。特に (高橋) 一生さんはアイデアマンで、野田さんの『ちょっとやってみよう』を楽しんでいて、野田さんが信頼を寄せられるのもわかります。松 (たか子) さんは言わずもがな、大倉 (孝二) さんも秋山菜津子さんもいらして心強いです。今はわからないことは秋山さんに聞いています (笑)」

作品の舞台は、潰れかかった遊園地。そこに現れる“アリス”が多部さんの役どころだが、そこは野田作品だけに、さまざまな言葉遊びや示唆的なシーンが重ねられ、一筋縄ではいかない複雑な物語が展開される。

「稽古に入る前に今回の題材の説明はしていただきましたが、単純な結末が用意されているわけではないし、心にずしんとくるようなテーマですし、自分のアリス役はどういうテンションでいけばいいのか、探っている段階です。ただ、作品を全部噛み砕いて理解して演じたいタイプの俳優さんもいらっしゃいますが、私は多分こんな感じかな、くらいの理解度でやってしまう方。今も、稽古場で『あのセリフはあそこにかかってるのかな?』などと話していると、秋山さんが『野田さん本人もわからずに書いているところもあるから大丈夫よ』って言ってくれて、『じゃあいっか』って開き直れたりして (笑)」

「個人的に面白いのは、スローモーション。これまでに観た野田さんの舞台でも取り入れられてきた手法ですが、稽古場で自分もやったり、みなさんがやっているのを見ていたら、すごく効果的に使われていました。しかもアンサンブルの方たちの動きがすごくて、まるでアスリート。早く本番を見てみたいです」

「女優として“どうしても演じていたい”というほどの強い気持ちはないんです。すごく暇が苦手で (笑) 。でも今回の稽古は本当に楽しくて、お芝居をしていなくても現場にいたいくらいです」

NODA・MAP 第26回公演『兎、波を走る』 6月17日 (土) ~7月30日 (日) 池袋・東京芸術劇場プレイハウス 作・演出/野田秀樹 出演/高橋一生、松たか子、多部未華子、秋山菜津子、大倉孝二、大鶴佐助、山崎一、野田秀樹

■NODA・MAP第26回公演 『兎、波を走る』 初日開幕コメント

●高橋一生

 開演前、野田さんから皆に改めて「言葉を大事にしてほしい」という話がありました。それを念頭に、今日はとても落ち着いてこれまでと同じようにやれました。僕が発したひと言で、お客様が虚構の世界から現実にぐっと引っ張られる瞬間を感じたような気がします。野田さんの演劇の力のすごさと、それを構築するチームワークの重要性をしみじみ実感しました。劇場で圧倒され、受け取ったものを帰り道や家で改めて感じる……そんな観劇体験ができる作品だと思います。

●松たか子

 「ああ、初日が開いた、よかった」というのが、今の率直な気持ちです。ワークショップ、稽古(けいこ)場での稽古、劇場入りしてからの稽古……そういった全てを経た上での初日だったなという感覚があります。お客様も緊張されていたと思うんですけれども、最初からたくさん笑ってくださって、役者それぞれが各々の役目を果たせているのだなと感じられて力をもらいました。まだまだ公演は続きます。劇場でお待ちしています。

●多部未華子

 「始まってしまった」という気持ちです。これから回数を重ねていく中で、自分がどうなっていくかもわからない。そんな未知の世界へのスタートを切ったなと感じています。まだいっぱいいっぱいで、手応えもお客様の反応を感じる余裕もありません。きちんと伝えなければいけないことを背負った複雑な役柄ではありますが、野田さんの作品の一員として舞台に立っていることを楽しめるところまでいきたいなと思います。明日からもまた頑張ります。


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