鈴木京香 201807

鈴木京香 201807


一途に30年、いまや堂々 鈴木京香「大人のけんかが終わるまで」 難役にも尻込みせずに挑戦

 不倫関係の女と男。男の妻の友人家族。レストランで出くわした5人の群像を描いた喜劇「大人のけんかが終わるまで」が上演される。相手にいらだつ女を演じる鈴木京香。役者人生30年目を迎え、「節目の時期に挑戦しがいのある役ができてうれしい」と話す。


 本作で演じるアンドレアは40代の独身女性。不倫相手のボリス(北村有起哉)は、経営する会社が破産寸前。おまけに妻の紹介したレストランに連れて行くという無神経さ。はっきりしない態度に業を煮やしながら、ふと出くわしたボリスの妻の友人夫妻と、その母イヴォンヌ(麻実れい)にも引っかき回される。コメディーでありながら、どこかほろ苦い大人の孤独を表現する役回りだ。

 昔は難しい役に直面すると、「私には無理」と尻込みしていた。30年間で、それは「挑戦」に変わった。役者人生の中で、自分が役を演じ、学ぶ機会を与えてくれた人々への感謝が胸にあるからだ。

 デビューから3年目、NHKの連続テレビ小説「君の名は」で広く知られるようになった。竹中直人監督の映画「119」(1994年)では皆で物語を作り上げる喜びを知り、ドラマ「王様のレストラン」(95年)をはじめとする三谷幸喜の作品では、登場人物のキャラクターを構築する妙味を学んだ。

 そして、2011年の舞台「たいこどんどん」。東日本大震災に直面したが、演出した蜷川幸雄の「やろう」という強い言葉に励まされた。奇(く)しくも東北地方を巡る話。宮城県出身の鈴木は被災地に思いをはせながら「自分が役者という仕事を選んだ意義、意味を考えた」。

 本作でも、共演者から強い刺激を受けた。認知症気味の老女を演じる麻実が「私もね、まだまだ新しい役を生きたいのよ」と話すのを聞き、感銘を受けたという。「節目節目で素晴らしい方々や作品と出会った。それは自分にとって、本当に大切なことだった」と鈴木は振り返る。

 芸能界に入った時から、求めるものは同じ。「役そのものになりきること」。だがそこに至るまでの感じ方は、月日の中で大きく変わった。かつては役になりきれない自分に、恥ずかしさを感じていた。今は「できるかどうかは私が判断することじゃない」と思う。自分に役を託した人がいて、見守ってくれる観客がいる。だから一生懸命やるだけ、と躊躇(ちゅうちょ)なく難しい役に挑戦できる。

 「少しずつでも培ってきた感性や感覚を生かせるような作品に、たくさんの時間と力を注いでいきたい」。心許(こころもと)なく歩んできた一本道を、いつしか堂々と進めるようになった。

 ヤスミナ・レザ作。翻訳・岩切正一郎、上演台本・岩松了。演出は上村聡史。

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